MENU

CONTACT

山岳写真データベースへ投稿のお願い

5月に入り、陽気は早くも初夏ですね。でも標高が高い井川山林は、街よりも季節が遅れてやってきます。私たちの第二の拠点、島田から大井川を遡っていくと、まだサクラが咲いていたり街では濃くなった木々の緑がまだ芽吹いたばかりだったりと、何となくタイムマシンで季節を遡っているような気分を味わうことができます。

だいたい季節が高低差100mを登るのに3日かかると言われますから、標高1200mの井川蒸溜所までは36日かかることになります。つまり、井川蒸溜所周辺の季節は36日前の島田と同じという訳です。そんな訳で、井川山林に携わる私共は街ではとっくに箪笥にしまうであろう防寒着を1か月以上たってもまだ着ているなんていうこともあります。

と、いうのが今まででしたが、昨今の気候変動の影響でしょうか、井川山林さわら島近辺のサクラは、以前はゴールデンウイーク頃が見ごろだと思っていましたが近年は少し早まった様な気がしますし、夏の気温も高くなっているように思います。植物だけでなく、以前は蚊も二軒小屋にはいなかったのが今はいますし、カラスもいませんでしたが今はいます。下界の生物が少しずつ井川山林にも進出しているように思います。

こんな風に、長いこと井川山林に携わっていると、感覚として暖かくなったとか、林道沿いの植生が変わったとかいうことはあるのですが、記録として把握できている訳ではなく、感覚の話しかできないのが残念なところです。二軒小屋やさわら島には寒暖計がありますが、ひどく寒かったり暑かったりすると見るくらいで、残念ながら記録は残っていません。会社の事務所としては大正年間からあるので、もしその頃から気温だけでも記録していれば貴重な財産になったのに・・・と、残念に思います。

1965年9月頃と2012年11月の悪沢岳と丸山

ところで、日本山岳会自然保護委員会とネイチャポジティブ発展社会実現拠点が山岳写真データベースというwebサイトを立ち上げています。このサイトは、写真を通して高山植生をモニタリングして、山岳環境の変化を見える化して共有しようとするものです。そして、一般の登山者さんに写真を提供いただくことで、登山者さんと研究者さんとの接点にもなるものです。

このサイトができた背景には、気候変動の影響と思われますが、世界各地で氷河の縮小や高山植生の変化が報告されるようになってきたことがあります。これらの変化は過去の記録との比較で分かるものですが、日本の山岳ではこうした変化の有無を判断する記録が不足しています。

これを補う唯一の記録は写真です。やっと登りついた稜線の景色に感動して撮った写真、山頂からパノラマで撮った写真、雪渓を撮った写真など登山者の皆さんが撮った写真が科学的な調査記録に代わる客観的な記録になり得ます。

例え風景写真であっても、ハイマツ群落は一目で分かるでしょうし、それ以外の植生の被覆の状態や崩壊地の様子なども分かると思います。昔撮った写真から最近撮られた写真まで多くの写真が集まることで、植生の変化を検討できるようになります。

こうした動きには、弊社も大きな期待を寄せています。また、弊社として、東邦大学の下野先生たちのグループと共同で登山者さんのご協力をいただきながら定点観測をするような仕組みづくりにも参加して参りたいと考えています。

それは、井川山林を含む南アルプスは北アルプスの乗鞍岳や室堂のように簡単にアクセスができないことから、様々な分野の調査や研究が遅れているからです。そして、調査や研究が進むことによって、井川山林、南アルプスの新しい魅力が見つかると信じているからです。

多くの登山客さんが撮られる高山帯の写真だけでなく、それぞれの標高に応じた樹林帯の写真、林床の写真なども定点観測をして撮りためていきたいと考えています。

皆さんもぜひご協力をお願いします。

この記事をシェアする:

  • Facebookでシェアする
  • Xでシェアする

CATEGORY