南アルプス産カーボンクレジットの創出
多くの皆様とゼロから生み出した、井川山林のJ-クレジット
十山株式会社が管理する井川山林は、南アルプス・大井川源流域に広がる約24,430haの森林です。
この広大な森林が吸収するCO₂を環境価値として見える形にし、森林の保全や管理へ還元できないか。そのような思いから、私たちは森林由来J-クレジットの創出に取り組んできました。
J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用、適切な森林管理などによるCO₂の排出削減量・吸収量を、国が「クレジット」として認証する制度です。井川山林から創出したJ-クレジットは、天然林や保安林を対象に含む、国内でも事例の少ない取組です。
ただ、実現までの道のりは決して簡単なものではありませんでした。井川山林は非常に広く、標高差も大きいうえ、現地へ行くだけでも相応の時間がかかります。森林情報の整理、モニタリング方法の確立、各種データの収集など、取組を始めた当初には数多くの課題がありました。
「本当にクレジットを創出できるのだろうか」と思うような状況から、一つひとつ課題を解決し、まさにゼロから形にしてきた取組です。その中心となって支えてくださったのが、静銀経営コンサルティング株式会社様です。制度の調査や関係機関との調整、プロジェクト全体の組み立てなど、長期にわたり伴走していただきました。
林野庁様には、井川山林での取組が森林由来J-クレジットの可能性を広げる一つの事例となることを踏まえ、必要な情報の開示や創出の障壁となっていた事項についての関係機関を巻き込んだアドバイス等を行なっていただいたと聞いています。日本製紙株式会社様には、GISを活用した森林のモニタリング手法について、実務的な知見をもとにご指導いただきました。また、静岡県様には、当時の公開GISデータ上で井川山林の区域だけ情報が欠けていた状況に対し、必要な情報のオープンデータ化や、関係機関との調整にご尽力いただきました。
このほかにも、多くの企業、行政機関、専門家の皆様にお力添えをいただき、井川山林から年間約1,500t-CO₂の森林由来J-クレジットを創出する仕組みが形になりました。
こうして振り返ると、このJ-クレジットは当社だけで生み出したものではなく、多くの皆様と一緒につくり上げたものだと改めて感じます。広大な森林を維持していくためには、林道の管理、森林の調査、植生の保全など、地道で継続的な取組が欠かせません。私たちにとってJ-クレジットは、単にCO₂の吸収量を販売することだけを目的としたものではありません。これまで経済的な評価を受けにくかった森林の働きを見える形にし、そこから生まれた価値を、再び森林の保全と管理へ返していくための一つの手段です。
そのため、クレジットの販売にあたっても、価格だけでなく、創出までの背景や井川山林での取組をご理解いただき、森林を守る活動に共感してくださる企業様とのつながりを大切にしています。当社自身も、事業活動に伴う環境負荷を減らすため、CO₂フリー電力の導入を進めるとともに、燃料使用によるCO₂排出を自社のJ-クレジットでオフセットしています。もちろん、J-クレジットだけで広大な井川山林の維持管理を十分に賄えるわけではありません。私たちの取組は、まだ始まったばかりです。
それでも、多くの皆様のお力をお借りして生まれたこの仕組みを大切に育て、森林が持つ価値を社会へ伝えながら、その価値を森へ返していく。そんな循環を少しずつ広げていきたいと考えています。
「自然を守り、自然を活かす」。
この理念のもと、これからも多くの皆様とともに、井川山林を次の世代へ引き継いでいきたいと思います。
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