スマホ一つで、山を守る。【BIOME】
いきものコレクションアプリ
Biome(バイオーム)というアプリをご存じだろうか。
「いきものコレクションアプリ」を掲げ、身近な植物や動物を撮影して記録することができる。ゲームのように楽しみながら、生きものについて楽しく学び、その記録を社会にも役立てていくことができるアプリである。
私たちは、このBiomeを南アルプスでもっと広げていきたいと考えている。南アルプスは、日本を代表する山岳地域の一つである。
一方で、その深さとアクセスの難しさから、十分に調査されていない場所も多い。南アルプス南部の一部が私有地であることも理由の一つかもしれないが、それ以前に、そもそも山が深すぎるのである。例えば、上高地には年間100万人規模の人が訪れ、立山にも多くの観光客や登山者が訪れる。それだけ多くの人を受け入れられる交通や観光のインフラが整っている。
一方、さまざまな統計を見る限り、南アルプス南部に入山する人は年間1万人程度ではないかと考えている。
圧倒的に少ない。
でも、だからこその魅力もある。物は考えようである。
人が少ないからこそ残っている自然も、きっとある。
山を歩いていて、一日ほとんど人に会わないこともある。そんな時は、外界から少し離れ、自然と自分だけになる時間が生まれる。少し雑な言い方をすれば、山を貸し切っているような気分になることさえある。私はそんな時間に、内省することが多い。南アルプスには、そういう時間が残っていると思う。
そして今、この山に来てくださっている人たちは、南アルプスに来るための強い動機を持っている人たちなのだと思う。決して簡単とはいえないアクセスを受け入れ、時間をつくり、それでもここに来たいと思って来てくれている。きっと、南アルプスの価値を何かしら感じてくれている。愛情や誇りを持っている人も中にはいるかもしれない。
その人たちと一緒に南アルプスを守ることができないだろうかと思った。
1万人と皆さんと力を合わせる
山で楽しんだ分、山に少し恩返しをする。
そんな仕組みがあってもいい。
日本は世界的に見ても、自然に恵まれた国だと思う。ただ、豊かであるがゆえに、自然があることを当たり前に感じてしまっているのかもしれない。
一方で、その自然は少しずつ変化している。
気候の変化、野生動物による影響、外来種、人の活動。目に見えにくい変化も含め、自然環境は常に動いている。だからこそ、まず「今、何がいるのか」を記録しておくことが大切なのではないかと思う。
現在、さまざまな方が十山株式会社の環境保全活動に協力してくださっている。その輪を、登山で南アルプスを訪れる方や、仕事で山に入る方にも少しずつ広げていきたい。その仕組みの一つとして注目しているのが、市民科学を活用したBiomeである。私たちでさえ、高山植物の様子を確認しに行くだけでも一苦労である。目的地まで何時間も歩かなければならない場所も多く、雨の多い山域なので、予定していた調査が天候によって実施できないことも珍しくない。
さらに最近では、気候の変化もあり、
「今年はいつ花が咲くのか」
ということさえ、これまでの経験だけでは捉えにくくなってきている。
限られた人数だけで、広大な南アルプスを継続的に調べ続けることには限界がある。
そこで考えた。
南アルプスを訪れる皆さんの力を借りることはできないだろうか。
もし年間1万人のうち、ほんの一部の方でも、生きものの記録を残してくれたらどうだろう。それだけでも、積み重なれば非常に大きなデータになるはずである。ライチョウの世界南限として南アルプスがあったりする。つまり、極端に言えば気候変動により温暖化が進むとこの南限からライチョウが居なくなるともいえる。植物だけでなく動物もモニタリングする必要があるのだ。
やることは難しくない。
Biomeのアプリを使って、山で出会った植物や動物の写真を撮る。
AIが種名の候補を提示してくれるので、それを参考にしながら投稿する。
それだけである。
私自身も、植物の勉強のためにBiomeを使っている。
知らない植物に出会った時、AIが種名を調べる手助けをしてくれる。
そしてもう一つ面白いのが、「いつ、どこで、何を見たのか」という自分自身の記録が残ることである。去年のこの時期には、この場所でこの花が咲いていた。そんなことを後から振り返ることもできる。
植物の名前を覚えながら、自分だけの自然観察記録が少しずつ蓄積されていく。これがなかなか面白い。そして、一人ひとりの記録が集まれば、それは自分だけの記録ではなくなる。研究や自然環境の調査に活用され、生物多様性を知るための情報になっていく。希少な生きものについては、保全に配慮して位置情報などが扱われる仕組みもある。楽しみながら自然を知り、その記録が社会にも役立っていく。
これが市民科学の面白いところだと思う。
南アルプス南部には、まだ十分に調査されていない場所が多くある。
高山植物をはじめとする希少な生きものが、どこに、どのくらい生育しているのか。
それを知ることはもちろん重要である。
しかし、私たちがもう一つ記録していきたいものがある。
外来種である。
南アルプスでも、外来植物などが確認されるようになっている。
どこまで入ってきているのか。
標高何メートル付近まで広がっているのか。
その「前線」を継続して記録できれば、将来の対策を考えるための基礎情報になるかもしれない。珍しい生きものだけを探す必要はない。普通に見える植物も、外来種も含めて、「今、ここに何がいるのか」を記録すること自体に価値がある。
だから、南アルプスを訪れる皆さんにお願いしたい。
ぜひ、一緒にBiomeをやってほしい。
山を歩きながら植物や動物の名前を知る。少しずつ自然に詳しくなる。そして、自分が残した記録が生態系を守るためのデータにもなっていく。自分自身が楽しみ、学びながら、同時に山にも少し恩返しができる。
そんな関係をつくれたら、とても面白いと思う。
これからは、登山者だけでなく、仕事で南アルプスに入る方も増えていく。
研究者、工事関係者、山小屋のスタッフ、ガイド、企業の方々。
山に入る一人ひとりが、少しずつ記録を残す。その積み重ねが、何年後かには大きな財産になるかもしれない。ちなみに、井川蒸溜所の室伏所長は、おそらくこの山域で最も多くの種をBiomeに投稿している一人である。
かなりの猛者である。
山で室伏所長を見かけたら、ぜひBiomeの話を振ってみてほしい。
南アルプスを守ることを、専門家や企業だけの仕事にしたくない。
山を歩く人。
仕事で山に入る人。
研究する人。
そして、この場所を好きでいてくれる人。
一人ひとりが少しずつ関わることで、守れる自然もあると思う。
山で楽しんだ分、山に少しだけ恩返しをする。
ぜひ皆さんもBiomeを片手に、南アルプスを歩いてみてほしい。
皆さんと一緒に、南アルプスの「今」を記録し、未来へつないでいきたい。
Biome社のアプリダウンロードや詳細はこちらから











