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vol.4:南アルプス“ミズナラ樽”プロジェクト

身勝手な誘い。

和杉親子のやりとりを聞いた私は、素直に反省していた。後から聞くと、カズは数か月前に修行先から地元へ戻り、和杉を継いだばかりであった。自分の仕事、ネットワークもない中で、仕事になるかわからないプロジェクトの打診、無理もない。そして、何より未知の領域で納得のいく仕事ができるのか、、、安易な回答などできるはずもなかっただろう。

身勝手な誘いだと反省した。

ただ、それでも金丸さんの優しさで生まれた出会い、何とか一緒に樽づくりをしたいという気持ちが抑えきれず、翌日私は和杉へ向かっていた。

楽しみながら一緒に。

井川蒸溜所でしか造れないウイスキーには、南アルプスのミズナラで樽をつくることが独自性となり、ウイスキーという長い時間軸を一緒に分かち合い、楽しむ相手として、若き職人であるカズは魅力的だった。カズと棟梁を前に、改めて一から「南アルプスのミズナラ樽づくりへの想い」を説明した。恐る恐る表情を確認し、言葉を選びながら話していたことを覚えている。

「僕も、親父と同じっすよ。昨日はちょっと水を差すようなことを言いましたが、職人としては血が騒ぎます。お酒のことはわかりませんし、やったことがないので、一緒に楽しく勉強しながらやっていきましょ。」

嬉しく、安堵の瞬間だった。

私は、万遍の笑みでしつこく何度も「本当に?」と確認した。そして、帰りの車中、改めて“人と人のつながり”に感謝したのだ。

後日談だが、棟梁にはプロジェクト参画に別の想いがあった。今の時代、中途半端な宮大工では生きていけないと言う。息子の可能性を拡げ、人とは違う経験を積めるチャンスだと考えていただいたようだ。

本プロジェクトは、この日やっとスタートラインに立てたのだ。

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