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兎年にちなんで

あけましておめでとうございます。
当コラムをお読みいただいている皆様、そして皆様のご関係の方々のご多幸とご健勝を祈念申し上げます。十山は今年も使命実現に向けSharing the Alps活動方針のもと、皆様と井川山林とをおつなぎする活動をますます充実して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今年は兎年です。井川山林でウサギそのものを見ることはほとんどありません。でも足跡なら雪が降るとあちこちで見かけます。丸いフンもそれなりに見かけます。
それでもやっぱり、井川山林でウサギと言えば、兎岳とウサギギクだと思います。

兎岳(2818m)

写真:聖岳の方から見た兎岳。ここからグングン下り、登り返します。鞍部の小さな登り下りはこの時期ナイフリッジになっていて緊張します。

兎岳は聖岳の西にあって、名前の由来は長野県側の遠山川の兎洞という沢に由来します。
井川山林側から見ると兎岳は赤石沢の奥に当たり、聖岳か赤石岳を越えて行くしかない比較的登りにくい山です。特に、兎岳を含む聖平小屋と百間洞山の家の間は、井川山林の中でも登山小屋の間隔が長い上に標高差が大きい難所で、兎岳山頂に立って帰るためには最低2泊3日は必要です。(近年流行のトレランは除きます)
兎岳は、見る方向によって随分印象が変わる山でもあります。聖岳方面から見ると、南面の遠山川による浸食が進んで山体の一部が地滑りを起こした重力変形地形(山頂と兎岳避難小屋のある小平地との段差)が目立ちます。でもそれ以上にショックなのは、兎岳との間の鞍部の深さです。聖岳から兎岳へは400m下って200mの登り返し。かなり脚にきます。
赤石小屋から見ると兎岳はきれいな三角形で、特に夕焼け空にシルエットになっている姿は美しく、登ってみたいという気持ちが湧いてきます。でも、そこに行くためには赤石岳を越さなければならず、前に書いたとおりでその日のうちにたどり着くことはできません。
兎岳は今はまだ深い雪の中で、登山シーズンはやはり夏です。今年の夏は干支の山に登ろうという人々で兎岳が賑わうことを期待しています。

写真:赤石小屋の東から見た兎岳。

ウサギギク

写真:ウサギギク ウサギっぽさが分かる写真でなくてごめんなさい。
でも愛嬌は感じてもらえると思います。

ウサギギクは高山帯の草地に生え、井川山林では千枚岳周辺や長野県境側を中心に多くの場所で見ることができます。
花は、デイジーやマーガレットの花びらを少し短くしたようないかにもキク科という感じで、すっと伸びた花柄の先に一輪咲きます。花柄の根元近くから両側に伸びた2枚の細長い葉がウサギの耳のようだというのが名前の由来です。特徴が分かりやすく、誰でも一度見たら覚えることができると思います。
花言葉は「愛嬌」。誰が考えたのか分かりませんが、ウサギギクが生えるような草地は高山帯の中では風当たりが弱く、特にウサギギクはハイマツを背にした暖かい場所に生えている印象で、晴れた日に大きく開いた黄色い花を見るとほのぼのした気持ちになります。また、同じ黄色い花でもシナノキンバイやシナノキンポウゲのような大群落を作ることなく、ぽつぽつとまばらに生える感じも個性を出していて、この花言葉はピッタリだと思います。
ウサギギクが生えるような草地は、近年ニホンジカの食害という問題があります。この問題は気候変動や野生動物との共生という非常に難しい問題ですが、将来も愛嬌あるウサギギクを見てほのぼのした気持ちになれるように、関係機関と協力して対策を考えていきたいと思います。

【文責:鈴木康平】

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